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2012-05-21 読書感想。「少女」 [1次元@読書感想]

春過ぎて、夏来にけらし、白妙の、衣干すてふ、天の香具山。

冬服の厚い生地の上着に遮られて伺うことの出来なかった山の稜線が薄手の白妙(シャツ)のみになることで露わになる。そこに漂う色香は初々しくもあり、瑞々しくもある。女子高生の夏服は至高であるといった意味の歌ですね。本来は初夏である6月から始まる衣替え。ところが最近は政府が推進するエコ政策の影響か衣替えの時期は早くなりつつあるようです。実際5月中旬頃から半袖姿の女子高生を見かけるようになりました。社会ではネクタイを外したりチノパン姿になるのがクールビズと言われていますが我々が本当に爽やかな気分になるのは己の軽装化ではなく、彼女たちの夏服姿を見かけたときです。今後もどんどんエコ化がすすみ夏服は5月開始があたりまえという風潮になるのを期待しております。いや、むしろ春からお願いします。
と、変態かつ身勝手な思想を宣いつつ、本日は女子高生を主人公にした小説「少女」の読書感想でも。

少女 (双葉文庫)

少女 (双葉文庫)

  • 作者: 湊 かなえ
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2012/02/16
  • メディア: 文庫

尊敬と軽蔑。信頼と猜疑、羨望と嫉妬という少女特有の複雑な感情で結ばれた由紀と敦子。無表情で冷めた思考の由紀。そして他者に迎合することで安寧を覚える敦子。小学生の頃からの付き合いである二人は同じ高校の二年生。端からはなんでも分かり合える友人と目されていたが、お互い「昔はそんなヤツじゃやなかった」と現在の友人の姿に苛立ちと息苦しさを覚えてギクシャクした関係に。そんな二人の間にある種の緩衝材としての役割で入り込んできた転校生の紫織。ある日、「親友の死」を自慢げに語る紫織の言葉に由紀と敦子は心を動かされる。死に破滅的な魅力を覚えた由紀。死を悟ることで強く生きていける自信を得たいと渇望する敦子。二人はそれぞれ「死」に近い場所を選び夏休みを過ごそうと行動する。由紀は難病を患う子供が集まる小児科病棟へと、敦子は常に死が蔓延る老人ホームへと。

序盤の流れはこんな感じ。「死」というファクターがやや不気味な雰囲気を醸し出していますが、基本的には夏休みの冒険を通じて二人の女子高生がお互いの友情を確かめ合うという話です。しかしながら、スタンドマイミー的なジュブナイル物と総括するには少女の「友情」に対して相当な作者の悪意が感じられ、エピローグの後味の悪さも手伝って賛否の分かれるであろう作品になっています。言うなればジュブナイルではなくジュブナイフ。なんだかんだで、美しくも躍動感に溢れた二人の友情に感動していると後ろから唐突にナイフで刺されます。痛いというかコワイというのが刺されてみた感想。終章に続く「遺書」を読み終え、もう一度序章にもどると大変恐ろしい事に。物語の中でこつこつと積み上げられていったお互いを想う気持ち。しかしそれはあくまで認めあった二人の中でのみ完結。ほんのちょっとでも離れた他者に対しては鈍く、冷たい。これぞ少女の感性だと作者の声が聞こえてきます。なにを言っているのか分かりませんよね。オレも分かりません。ご興味のある方は一読してみてください。


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