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2012-12-14 ちはやふる19巻+小説「ちはやふる二」+かるた入門編のレビュー [2次元@ちはやふる]


ちはやふる(19) (BE LOVE KC)

ちはやふる(19) (BE LOVE KC)

  • 作者: 末次 由紀
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/12/13
  • メディア: コミック

良質のラブコメや恋愛コミックスを読むと、ニヤニヤしながら寝床でローリングしたくなりますよね。登場人物の赤面する姿や、はにかむ姿を見てつい身体をゴロゴロと回転させてしまう。いわゆる身悶えというやつです。それは物語の中で発せられた恋の温かい空気が読者の心に環流し、「風」を生み出した結果なのです。吹き込んだ「風」はあたかも風車のごとく横軸の運動エネルギーに変換されて、読者の身体を回転させる。別名赤面回転の法則とも呼ばれています。

一方で縦軸の運動エネルギーを発生させるコミックスもあります。例えばスポ根マンガがそれです。スポ根マンガの登場人物が発する「闘志」や「情熱」に影響されて思わずでんぐり返しをしてしまったことはありませんか?これは心の中で「オレも戦いたい」「オレも何か成し遂げたい」という「想い」がマンガの発する「熱」によって膨張し、やがて圧力となって蒸気機関車の車輪のように縦軸の運動エネルギーを生み出した結果に他なりません。これは別名、空回りの法則と呼ばれてます。

横軸と縦軸の運動エネルギー。少女コミックスは横にゴロゴロ回転する事が多く、少年コミックスは縦にゴロゴロ回転する事が多い。無論、これはあくまで傾向であり、少女コミックスの中には縦軸の運動エネルギーをもたらす作品も複数存在します。その筆頭と呼べるのがご存じ、「ちはやふる」です。

今月発売されたちはやふる19巻。今作は吉野大会のA級戦をメインにしています。千早VS元クイーン猪熊ママ、新VS白波会の坪口さん、原田先生VS南雲会の村尾さん、そして太一VSドS須藤氏の対決から始まります。某ボクシングマンガならそれぞれの対決に1巻ずつ費やしているであろう個性的かつ魅力的な面々の対決。それをなんと200ページ前後に収めてしてしまうのですからそこに発生した熱量は半端ない。私の心はその熱を受けて大膨張。読んでいる最中にでんぐり返し2回転をするほど興奮しました。今年購入した数あるコミックスの中でも一二を争う熱量。今作が「ちはやふる」のクライマックスだと言われても素直に頷いてしまうほどです。

気になる試合の詳細はそれぞれ読んで頂くとして、心に残ったシーンと感想をいくつか。

■元クイーン、猪熊ママの「凄味」
18巻から登場した猪熊ママ。桜沢先生と同世代の人でクイーン4連覇の大物です。子育ての為に試合から離れていましたが現役復帰。朗らかな雰囲気から一変、試合では尋常ではない眼力をメガネの奥から発し、妖気めいた凄味を醸し出していました。すでに一線を退いて指導者になっている元ライバルの桜沢先生が現役復帰した彼女に向けて「情熱があるのね」と声をかけますが、猪熊ママは「情熱」という言葉を否定します。彼女が現役復帰した理由は「情熱」ではなく、自分の強さを顕示したいという強烈な我欲でした。そして「私のかるたは、誰よりも私が楽しむかるたよ」と言い切り薄笑いを浮かべます。その言動を見ると、確かに彼女がかるたに賭ける想いは「情熱」と分類するものではなく「業」に近いと感じました。この境地に達せられるかがクイーンになれるか否かの分解点なのかもしれません。

■新に芽生えた「対抗心」
高校選手権個人戦でクイーンの詩暢を破り名実ともに高校世代最強に躍り出た新。そんな彼でしたが、惜しくも白波会のエース坪口さんに敗れます。高校生の中では異次元の強さがありましたが、経験を積んだ古強者が集うA級の中では常勝できるまでの実力はまだないようで正直一安心。あんまり強すぎると太一の立つ瀬がないからね。あと余裕かましている彼の表情よりも負けたときの半ギレ顔の方が人間らしくて好きです。さて、そんな新が今作においてようやく太一に対して正面から向き合うことになります。

新はこれまで太一の事を「かるた仲間」としてしか見ていませんでした。かるた競技の「ライバル」としては、ハッキリ言って眼中になかった。南雲会の兄弟子、村尾さんと対峙する太一を見て、「かるた続けて、A級にまでなって」と嬉しそうに笑っていた新。太一が準決勝に上ってきたことの驚きや警戒よりも彼がかるたを続けていてA級に「まで」なったことが嬉しくてたまらないといった様子。うん、完全に太一の実力を侮っています。

しかし、太一は「かるたを頑張って続けている」というレベルではなく「かるたに青春をかける」レベルで精進し、ついには超A級の村尾さんを倒すほどの力をつけ始めていました。そんな彼を見て新も意識を改めます。試合の終盤、劣勢の村尾さんを見て新は内心で呟きます。「村尾さんが負けるはず無い」そこには友人の快進撃を喜ぶような甘い心境はなく、「まさか」という思い以上に「対抗心」が芽生えている様子がありありと描写されており、太一ファンとしては嬉しいシーンでした。以前太一が近江神宮にて宣戦布告した「敵だよ」という言葉がこれで生きてきます。これから会う度にバチバチと火花を散らして欲しいところ。とても楽しみです。

■「襷」そして「二人で」
熱い展開のオンパレードだった今作の締めくくりは千早VS太一の決勝戦でした。公式戦では初対戦になります。ここでまず印象的だったのは太一が千早の力を封じるために札の配置を変更したシーンですね。誰よりも千早の事だけを考えて、苦しくなるように、苦しくなるようにと編み出した札の配置。セオリーを無視した配置に驚く千早。涼やかな視線で対峙する太一。ブヒ///私はこのシーンで不覚にもときめき、縦回転ではなく横回転のローリングをかましてしまいました。これもうね。告白ですよ、告白。さりげなく、でもちょっと、気負った太一らしい千早に対しての告白。誰よりも千早の事を考えて、考え抜いて、そしてなんとしてでも勝つ。勝って千早を認めさせる。その宣言であり告白のように見え私はコミックス片手に悶絶致しました。

そして、最後の4ページ。この辺りはマーベラスとしか言いようがありません。これまでの「ちはやふる」の既刊の中でも最高のシーンの一つと言ってよいかもしれません。白熱する二人の勝負の最中に瑞沢高校かるた部顧問の宮内先生が叫びます。

「襷」と。

なんとも意味深ではございませんか。襷といえば袖留め用の補助具ということになりますが、駅伝でも用いるように「繋ぐ」あるいは「絆」というイメージがあります。そんな襷を勝負に集中するあまり結び忘れていた二人。慌てて襷を結びますがその際に二人か交わす会話がまた意味深。
(太一)「なんで忘れてんだよ千早」
(千早)「太一がつけてれば私も思い出すよ」
そして、襷を結び笑顔で見つめ合う二人。浮かび上がるのは「二人」がかるた部作りの為に畳を運び入れた日の情景。物語の最初からしっかりと「結ばれていた」千早と太一の絆を暗示しているようで大変感動的でした。太一ファンとしてなんとなく明るい未来を妄想できる素晴らしいヒキで終わった19巻。いまから次巻が大変楽しみです。


小説 ちはやふる 中学生編(2) (KCデラックス)

小説 ちはやふる 中学生編(2) (KCデラックス)

  • 作者: 時海 結以
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/12/13
  • メディア: コミック


お次は小説版ちはやふるの第二弾。「ちはやふる中学生編②」の感想です。
第一弾の小説は中学生時代の千早と太一の様子が描かれていましたが、今作は綿谷新オンリー。一冊丸ごと新の物語です。ファン向けの作品としては悪くない出来だった前作。しかし、小説版と言うには少々物足りない部分があったのも確か。文章でしか表現できない内面描写についてもう少しがんばってほしかったというのが本音でした(特に千早編)

その点、今回の新編は小説として良く出来ていると思います(上から目線)。
「ちはやふる」のファンが読者であることを前提になっているので、「ちはやふる」を知らない読者が楽しめるかは断言できませんが、かなり丁寧に新の内面を描写しており、祖父の介護や家庭問題が絡むヘビーな物語の流れと相まってなかなかの読み応えがありました。

福井に帰ってからの中学三年間を描いた本作。高校一年の時に千早と再会した新がなぜ、あれほど荒んでしまったか。その経緯が書かれています。悲しい結末を前提にしたお話ですが、新の「かるた」に対するバックボーンを形成した重要なエピソードもあり、新ファンはもちろんのこと、ちはやふるファンであれば読んでおいて損はないでしょう。

さて、最後に芦野由宇について。
原作ではほんの僅かしか登場しなかった芦野由宇。超絶美少女の千早に比べて地味顔の彼女の印象ははっきりいって薄く、「ああ、千早が持ってきたかるたを突き返そうとした彼女か」という程度の認識でした。しかし、そんなモブ級のキャラだと思われていた彼女が本作では大活躍します。世話焼きっ娘で、素直で、純真で、さらには心が強いという、パーフェクトヒロインぶりを発揮。本来であれば鬱々とした雰囲気になってしまってもおかしくはない物語なのに「ちはやふる」らしさを保てたのは紛れもなくと彼女の存在のおかげでした。祖父の介護で心が折れつつあった新を励ますシーンはマジ感動もの。今回の小説の表紙は新と千早のツーショットですが、この功績を鑑みると、新の横に立つべき人は芦野由宇しかありえないと思えます。しかし、悲しいかな彼女は新の「幼なじみ」・・・。最近のブーム?として「幼なじみ」は不遇な扱いを受けると決まっています。この属性さえなければメインヒロインの座を奪えるほどのポテンシャルを持っていただけに残念でたまりません。


ちはやふるかるた 入門編 (講談社キャラクターズA)

ちはやふるかるた 入門編 (講談社キャラクターズA)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/12/13
  • メディア: コミック


続いてはコミックスと同時発売されていた、「ちはやふる かるた入門編」についてレビュー。
購入するまで、コミックス同梱のファンアイテムだと思い込んでおりましたが、この商品にコミックスは付属していません。開梱してからその事実に気がつき、本来の目的であるコミックスを購入するために書店にとって返したのは内緒。

DVDBOXのようなスタイルで、奇麗な印刷の外箱と、本体を収納するBOXに分かれています。それでは商品の紹介を。
■読み札50枚、取り札50枚の計100枚のセット
■専任読手の読み上げCD
■原田先生の競技かるたのルール説明書
・・・これで価格は税込み2100円。この価格が高いか安いかは意見の分かれるところだと思います。特に物議を醸しそうなのが札の枚数。この商品には実質50首しかありません。百人一首は文字通り100首あるわけで、本来必要な札の半分しかないというのはいかがなものかと。しかし、考えようよってはこの思い切った?商品展開もありなのかな、と思いました。というのも、競技かるたで使用する札は50首。残りの半分は空札になります。なのでこのセットだけでも遊ぶことは十分可能。まずは50首を徹底的に覚えてコツを掴んで欲しいという親心なのかもしれません。

枚数の少なさは品質でカバー。といった感じで、札の質感や印刷のレベルは結構上等な部類だと思います。2000円前後で購入した百人一首の札よりも1.5倍は厚さがあり、耐久性も高そう。また取り札の端にはご覧のように読み札の始めの文字が記載されおり、初心者にとってはありがたい仕様になっています。決まり字を覚えていない人同士が「ちはやふる」のイメージだけでゲームを始めると悲しい結果になるのは経験済み。上の句ではまったく反応できず、下の句でようやく動き出すという、スピードが信条の競技かるたらしからぬ、のろのろとした展開になります。なので、この頭一文字という「ヒント」が書かれているだけで初心者でも札を取るスピードが飛躍的に上がるので「ちはやふる」的雰囲気を楽しむには良いと思います。

読み上げCDの読手を声優さんにせず、本物の専任読手にしたことにも好感が持てます。ちはやふるファンとしては正直なところ、かなちゃんや、千早の声で読み上げてほしいところでしたが、この商品は「ちはやふる」のファンアイテムとして作られたのではなく、「ちはやふる」を通じて競技かるたに興味を持った人向けに制作された物と思われます。かるたに興味を持った少女たちが増えてくれるのは嬉しい限りなので(ロリ的に)これはこれでOK。是非全国津々浦々に普及してほしいと思います。そして将来的には着物や袴姿が普段着とし定着する未来を夢見ております。

おまけ

ちはやふるオフィシャルファンブック (KCデラックス)

ちはやふるオフィシャルファンブック (KCデラックス)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/12/13
  • メディア: コミック


ちはやふるのオフィシャルファンブックも購入しました。コミックス、小説、かるた入門編、オフィシャルファンブックを同日に販売するなんて、講談社はアホか。大人だってお小遣いに四苦八苦しているので、子供のファンはこの四つを同時購入するのは大変でしょうに。いくら来年アニメの第二弾が始まるからとはいえ、やり過ぎです。

なんて怒ってみたところで販売していれば購入してしまうのがファンの悲しいところ。こちらの本はなんというか、まあ、雑多な情報が集まった、ファンブックらしい構成になっています。キャクターのプロフィールなんて本当に作者が考えたのかアヤシイところもちはらほら・・・(若宮詩暢の好きな食べ物が八つ橋って、それ好物じゃなくて名物だろ)唯一の読みどころは札制作の舞台裏と対戦表のところでしょうか。試合経過と共に刻々と変化する取り札の配置をExcelで可視化しているという制作の舞台裏は大変興味深く読めました。これらに興味のある方は購入してもよいのでしょうか。
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